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2006年10月アーカイブ

 月に村雲といった風情でしたね。満月の光に映えた雲の動きがステキです。そこで、永井荷風訳「珊瑚集」より、二作ほど(ま、引用ということで...)


ましろの月
ポオル・ヴヱルレヱン

ましろの月は
森にかがやく。
枝々のさゝやく声は
繁《しげり》のかげに
あゝ愛するものよといふ。

底なき鏡の
池水《いけみず》に
影いと暗き水柳《みずやなぎ》。
その柳には風が泣く。
いざや夢見ん、二人して。

やさしくも、果《はて》し知られぬ
しづけさは、
月の光の色に侵《し》む
夜《よる》の空より落ちかゝる。

あゝ、うつくしさの夜《よ》や

月の悲しみ
シヤアル・ボオドレヱル

月今宵《こよい》いよゝ懶《ものう》く夢みたり。
おびたゞしき小布団《クツサン》に翳《かざ》す片手も力なく
まどろみつゝもそが胸の
ふくらみ撫《な》づる美女の如《ごと》。

軟かき雪のなだれの繻子《しゆす》の背や、
仰向《あおむ》きて横《よこた》はる月は吐息も長々と、
青空に真白く昇る幻影《まぼろし》の
花の如きを眺めやりて、
懶き疲れの折々は下界《げかい》の面《おも》に、
消え易き涙の玉を落とす時、
眠りの仇敵《きゆうてき》、沈思の詩人は、

そが掌《てのひら》に猫眼石の破片《かけ》ときらめく
蒼白《あおじろ》き月の涙を摘《つみ》取りて、
「太陽」の眼《まなこ》を忍びて胸にかくしつ。