月に村雲といった風情でしたね。満月の光に映えた雲の動きがステキです。そこで、永井荷風訳「珊瑚集」より、二作ほど(ま、引用ということで...)
ましろの月
ポオル・ヴヱルレヱンましろの月は
森にかがやく。
枝々のさゝやく声は
繁《しげり》のかげに
あゝ愛するものよといふ。底なき鏡の
池水《いけみず》に
影いと暗き水柳《みずやなぎ》。
その柳には風が泣く。
いざや夢見ん、二人して。やさしくも、果《はて》し知られぬ
しづけさは、
月の光の色に侵《し》む
夜《よる》の空より落ちかゝる。あゝ、うつくしさの夜《よ》や
月の悲しみシヤアル・ボオドレヱル月今宵《こよい》いよゝ懶《ものう》く夢みたり。
おびたゞしき小布団《クツサン》に翳《かざ》す片手も力なく
まどろみつゝもそが胸の
ふくらみ撫《な》づる美女の如《ごと》。軟かき雪のなだれの繻子《しゆす》の背や、
仰向《あおむ》きて横《よこた》はる月は吐息も長々と、
青空に真白く昇る幻影《まぼろし》の
花の如きを眺めやりて、
懶き疲れの折々は下界《げかい》の面《おも》に、
消え易き涙の玉を落とす時、
眠りの仇敵《きゆうてき》、沈思の詩人は、そが掌《てのひら》に猫眼石の破片《かけ》ときらめく
蒼白《あおじろ》き月の涙を摘《つみ》取りて、
「太陽」の眼《まなこ》を忍びて胸にかくしつ。
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