ずいぶん昔、ルキーノ・ヴィスコンティの「ルートヴィヒ/神々の黄昏」という映画を観ました。ヴィスコンティならではの世紀末的、耽美的なタッチだと記憶していますが、映画に出てくる、ワーグナーの音楽が生理的にあわないらしく、途中で筋も分からなくなってしまいました。森鴎外の「うたかたの記」に出てきたルートヴィヒ 2世と結びついたのは、ずいぶん後でのことです。
森鴎外は、ドイツ留学の 3年目でちょうど真ん中にあたる、1886(明治十九)年6月13日にルートヴィヒ 2世のシュタルンベル湖での溺死事件に遭遇し、帰国後に発表した「うたかたの記」にその事件を取り入れます。主人公が鴎外の分身そのものから離れているだけに、同じ「ドイツ三部作」のうち、「舞姫」に比べてやや乾いた叙情ですが、それでも物悲しく浪漫的な趣きがあり、好きな作品です。鴎外は、事件のあった湖畔で、9月2日に四首の七言絶句を作っています。今回はとりあえず、二首紹介します。
(その一)
望斷 す鵠山 城外 の雲
詞人 何事ぞ 涙紛粉 たるは
艙窓 多少の綺羅 の客
憶 はず波間 に故君を葬むるを
(その二)
當年 の向背 群臣を駭 かし
末路 の凄愴 鬼神を泣かしむ
功業 千秋且 く問ふを休 めよ
多情偏 へに是 れ 詩を愛するの人なればなり
路易 二世
このスキャンダルは、当時のバイエルン王国を巡る複雑な背景があったらしいのですが、そんな政治の世界に、芸術家気質の故、生き残る事ができなかったルートヴィヒ王への深い同情を感じられる詩です。
画像は、ルートヴィヒ 2世肖像(Wikipedia)より
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