いまのままの9条が好き

2007年08月04日

モスラの飛んだ日…

 小野俊太郎「モスラの精神史」 ゲット価:798円

 昨日の脱線に引き続いて、その上もうひとつ脱線です。母が映画好きだったこともあり、子ども時代には、けっこうたくさんの映画に連れて行ってもらいました。でもたいていは、子ども向き映画というわけではなく、むしろ母の楽しみに付き合わされたようです。「風立ちぬ」という「文芸映画」のラストシーンでヒーローとヒロインが再会を果たすシーンでは、思わず大きな声での「よかったな!」という感想に周囲の客席がほくそ笑んだらしく、今でも母親の思い出話になっています。あの頃、見た映画は遠い記憶に霞んでいますが、ふと一場面が断片として思い浮かぶことがあります。「モスラ」という映画は、かなり年長になってからの1961年7月の封切りだそうですが、モスラが羽化して、空へ飛び立つシーンは微かに覚えています。それよりも、ザ・ピーナッツの「モスラの歌」が学校で流行り、級友たちと、「モスラや、モスラや」と歌ったことの方が、反復する記憶なので、より鮮明なのでしょう。本の紹介の詳細は避けますが、一本の映画作りのために様々な分野の人材が、各々のアイデアを持ち寄った、その作る側のモスラ誕生への思い入れがよく分かりました。同時に、観る側にとっても、飛び立つモスラへは、戦後の厳しい時代を生きてきた自らの人生を重ね合わせる何か――例えば、核兵器への恐怖や嫌悪感、YS-11 国産旅客機の就航、まだ見果てぬ「南方支配の夢」などでしょうか――があったればこそ、あんなにヒットしたのでしょう。何よりも興味深かった事は、「モスラ」の原作は、福永武彦、堀田善衛、それに、わが「木村蒹葭堂のサロン」の著者、中村真一郎とという「純文学」畑の三人の合作だったことです。遊び心も充分にあった彼らの意図が、映画では、そのままの形では実現しなかったけれど、それでも「主張や価値観の異なる担い手が対話をし、共同戦線を張ることさえでき」、「人的つながりに由来する豊穣な生産力である」、映画芸術がそんなパワーを持っていた時代があったのですね。「モスラ」の繭は、そうした彼らの思いを集めて編み上げた「夢の繭」だったのかもしれません。

映画「モスラ」予告編が、Youtubeにありますので、ご覧頂くのも一興になるでしょう。

2007年08月03日

花はさくら木、人は…

 辻原登「花はさくら木」 ゲット価:700円

 芥川龍之介の「木村葭堂」の話題を少し脱線させておきます。木村蒹葭堂サロンができた頃は、田沼意次の台頭期と重なります。辻原登「花はさくら木」が、新聞連載中にたしか田沼意次と木村蒹葭堂の名前がよぎった気がして、今回読んでみました。近頃は、意次はむしろ開明的な政治家であるとの評価の方が有力になっているのでしょう、この小説でも、その線での田沼像です。その「重商主義」的な政策から、大阪の大商人鴻池と手を結ぼうとします。その権謀術数の中、敵味方相乱れて、公家皇室はじめ、朝鮮使節など多彩な人物が登場します。木村蒹葭堂も、その一人ですが、むしろ、上田秋成や蕪村、俳人の炭太祇などサロンの周辺にいた文人が、それなりに活躍します。木村蒹葭堂は、点景人物の一人といった感じで、ちょっと残念。木村蒹葭堂は、田沼失脚後もサロンとして賑わいましたが、松平定信の「寛政の改革」のあおりで、弾圧を受けますが、また別の形で、商家を再興されるあたり、大阪商人のしたたかさがバックボーンに持っていたようです。しかし、没後はその膨大なコレクションは、(芥川の冗談で言えば「クレオパトラの金髪も含めて」)幕府に没収されてはしまうのですが…

2007年07月30日

暗香枕に和す、合歓の花

ブログ照る日曇る日に投稿しました。

2007年07月27日

芥川龍之介―杜牧―李賀―佐藤春夫ー平野啓一郎

 芥川龍之介全集 8
 芥川龍之介の話題は続きます。「河童忌」の記事で触れましたが、芥川作品の翻訳のうち、民族差別的な要素を指摘されがちな評価であった「支那游記」。その中国語訳が出るくらいだから、再評価の機運があるのでしょうね。(関口安義氏は、その急先鋒の一人です。)「支那游記」は、上海游記、江南游記、長江游記、北京日記抄、雑信一束(いずれも、青空文庫作業中)と続く一連の中国紀行文です。各々の巻で差別的な表現のニュアンスの違いもあり、詳細には立ち入りませんが、今読み返すと、日本文化のバックボーンとしての中国文明に陶酔しようとする願望と植民地化した今の中国の体験、さらに言うなら、その中国に「野望」を隠さない日本の現実が、二重にも三重にもだぶって描かれているとも取れます。漱石とは時代が違うし、谷崎潤一郎や後で引用する佐藤春夫とも、気質が違う、芥川独自のスタンスがあると言えるでしょう。

その中でも、もっとも彼らしいと思うのは「江南游記」にある、日本人ならちょっとは憧れる杭州郊外の西湖を「貶す」文章でしょう。有名な南朝の時代の名妓蘇小小(彼女は、杜牧の詩にも固有名詞として出てきます。)の墓は「詩的でも何でもない土饅頭どまんじゅうだった。」そうです(+_+)。これじゃあ、あまり可哀想なので、李賀の有名な詩と「古調自愛集」からの佐藤春夫の訳詩を小小、じゃなかった少々(^^;)。

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2007年07月25日

春風の駘蕩するや、山水画

 芥川龍之介全集 7
 しばらくは、昨日の「河童忌」を受け、芥川龍之介に因む話題を続けます。以前、大阪に関係する文学者を扱った大阪民主新報の連載を何回か紹介しました。芥川で言えば、1918年(大正 7年)に大阪毎日新聞社の社友になってから、大阪と縁ができるようになり、そのせいか大阪が舞台の作品が目立つようになります。「枯野抄」(青空文庫)もそうですが、連載には、他に「仙人」や「」が挙げられていました。「僻見」(青空文庫作業中)中の一篇、「木村葭堂」もその一つです。(「僻見」で取り上げられている人物は、木村葭堂の他に、斎藤茂吉、岩見重太郎、大久保湖州というなんともユニークな人選です。茂吉以外は、ほぼ初対面の人物です。強いて言えば、加藤周一さんの「三題噺」に趣向が似てなくはないと思いました。)京都の美術館の一室で、芥川は、木村葭堂の画に魅せられるところから話は始まります。体調の故か、その日は富岡鉄斎や浦上玉堂には、見向きもせずに、「目の前へ奇蹟よりも卒然と現れた」「小さい紙本しほん山水さんすい」に引き付けられたとありますから、感動の程度が分かります。

以下、木村葭堂の紹介は、主に芥川その人をして語ってもらいます。実にウィットに富み、「人懐っこい」文章ですので…。なお、部分的には、この一文に想を得て、主としては、「頼山陽とその時代」「蠣崎波響の生涯」に連なる江戸文人の世界として、中村真一郎さんは「木村蒹葭堂のサロン」を絶筆として遺しました。木村葭堂の画や肖像も含めて、その詳細な書評が、「松岡正剛の千夜千冊」にあります。後日、松岡さんとは違った切り口で紹介する機会があるかも知れません。また、Wikipediaに掲載する「山水図」が芥川が感動した画でしょう。同じく、続きに掲げておきます。

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2007年07月24日

「河童忌」から思うこと

ブログ照る日曇る日に投稿しました。

2007年07月23日

四朝三十載、夢に似て復た非なるかと疑う

 杜牧詩選
 増補 春夫詩鈔  ゲット価:100円
 改めて杜牧の一番の長編詩「杜秋娘詩」を読みました。以前あまり感じませんでしたが、少なくとも前半は彼の女性に対するそれなりの優しさが伝わってきます。「十年一たび覚む 揚州の夢、あまし得たり 青楼 薄倖の名」と、遊郭にプレーボーイの浮名を流した杜牧の事ゆえ、女性の身の上話に親身に耳を傾けたのかもしれませんね。杜秋娘は、初唐の時代の女性、妾に入った李錡という大官が反乱の罪で滅ぼされた結果、朝廷に召されて、時の帝憲宗に寵愛されました。その後、憲宗の孫、漳王の乳母になりましたが、漳王も政争の犠牲になり、廃せられ、故郷、揚子江領域の京口(潤州)に再び零落した姿で戻された、その晩年の彼女を杜牧は見て詩を作ったとされています(佐藤春夫「車塵集」の詩人略伝による、この略伝は奥野信太郎によるものかもしれない)が、杜秋娘は、漳王の乱以前に故郷に帰ってきており、史実とは少し違うようです。いずれにしても、世の移り変わり、栄耀栄華とその没落には、自らの身に照らして、杜牧には心動かされたのでしょう。

  杜秋娘詩(一部)
京江 水は清く滑らかに
女を生めば 白きこと脂の如し
其の間 杜秋なる者
朱粉の施を労せず
老濞 山に即きて鋳
後庭 千の双眉あり
秋は玉斝を持って酔い
与に唄う 金縷の衣
濞 既に白首にして叛し
秋も亦た 紅涙多し

四朝三十載
夢に似て復た非なるかと疑う
潼関 旧吏を識るも
吏髪 已に糸の如し
却び喚ぶ 呉江の渡し
舟人 那ぞ知るを得ん
帰り来たれば 四隣改まり
茂苑は 草菲菲たり
清血 灑げども尽きず
天を仰ぐも 誰に問うを知らんや
寒衣 一疋の素
夜 隣人の機を借る

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2007年07月21日

学生時代のある演説会を思い出しました…

ブログ照る日曇る日に投稿しました。

2007年07月10日

朝顔の葉陰(はかげ)に猫の目玉かな…

ブログ照る日曇る日に投稿しました。

2007年07月09日

晩風 梔子香る…

 江馬細香詩集『湘夢遺稿』 (下)  ゲット価:1300円

ブログ照る日曇る日に、投稿しました。

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