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書棚を探すと…の最近のブログ記事

 杜牧詩選
 増補 春夫詩鈔  ゲット価:100円
 改めて杜牧の一番の長編詩「杜秋娘詩」を読みました。以前あまり感じませんでしたが、少なくとも前半は彼の女性に対するそれなりの優しさが伝わってきます。「十年一たび覚む 揚州の夢、あまし得たり 青楼 薄倖の名」と、遊郭にプレーボーイの浮名を流した杜牧の事ゆえ、女性の身の上話に親身に耳を傾けたのかもしれませんね。杜秋娘は、初唐の時代の女性、妾に入った李錡という大官が反乱の罪で滅ぼされた結果、朝廷に召されて、時の帝憲宗に寵愛されました。その後、憲宗の孫、漳王の乳母になりましたが、漳王も政争の犠牲になり、廃せられ、故郷、揚子江領域の京口(潤州)に再び零落した姿で戻された、その晩年の彼女を杜牧は見て詩を作ったとされています(佐藤春夫「車塵集」の詩人略伝による、この略伝は奥野信太郎によるものかもしれない)が、杜秋娘は、漳王の乱以前に故郷に帰ってきており、史実とは少し違うようです。いずれにしても、世の移り変わり、栄耀栄華とその没落には、自らの身に照らして、杜牧には心動かされたのでしょう。

  杜秋娘詩(一部)
京江 水は清く滑らかに
女を生めば 白きこと脂の如し
其の間 杜秋なる者
朱粉の施を労せず
老濞 山に即きて鋳
後庭 千の双眉あり
秋は玉斝を持って酔い
与に唄う 金縷の衣
濞 既に白首にして叛し
秋も亦た 紅涙多し

四朝三十載
夢に似て復た非なるかと疑う
潼関 旧吏を識るも
吏髪 已に糸の如し
却び喚ぶ 呉江の渡し
舟人 那ぞ知るを得ん
帰り来たれば 四隣改まり
茂苑は 草菲菲たり
清血 灑げども尽きず
天を仰ぐも 誰に問うを知らんや
寒衣 一疋の素
夜 隣人の機を借る

ブログ照る日曇る日に投稿しました。

 みんなの談輪室で、laihama さんが、一海知義氏の「論語語論」をご紹介されてから、最近は、氏の著作と因縁深くなった。今回とりあげるのは、たしか、わが青春時代に読んだことがある「言葉の蘊蓄本」である。この種のものは今でもけっこう流行しているかもしれないが、先生文章は、一衣帯水の国、中国文化というきちんとバックボーンがあるだけに、「苛政は虎よりも猛なり」をひた走り、最近は社会的な不祥事の続発に周章狼狽している、どこかの首相の「引用」や、その先輩たちの付け焼刃的な「漢詩」と違い、奥行きがあり、今でもすこぶる勉強になる。今後は、ちょっと発憤して、素人なりに、漢文をはじめとする中国文学に親しみたいと思っている。みなさんの話題提供も切に希望する。

 蛇足ながら、この本に引用されていた、経済学者、河上肇の漢詩を載せておく。


人間じんかん第一自由の身
これれ早醒第一の人
かまどを吹いて四更しこう薄粥はくしゆく
虫を聴いて灯下清辰せいしんわた

【注】リンクしていない太字の部分は、この本で取り上げられた漢語です。この投稿、十分に推敲できていない点をお詫びいたします(__)

Blog 照る日曇る日に投稿しました。

 追加として、彼の探偵小説観がよく表現されていると思われるので、坂口安吾が「不連続殺人事件」の「犯人さがし懸賞」正解者選後感想で述べているところを引用します。


 人間性を不当に不合理に歪めて、有りうべからざる行動を実在させそれを、合理的に解けと云ったって無理である。私は、全世界の探偵小説の九十九パーセント、否、九十九、九九パーセントぐらいが不合理なものだと思っている。
 犯人の間違った答案(「読者への挑戦」への解答)の多くは、消去法を用いられているが、なるほど探偵小説は、現実の犯罪と違って、登場人物が三十人なら、その三十人の仲に必ず犯人がいるのであるから、消去法というものが、一応最も便利で、有効に思われる。ところが、消去法による限り、必ず犯人は当たらない。
 いわば探偵小説のトリックとは、消去法を相手にして、それによる限り必ず失敗するようにつくられたものである。消去法によると、まっさきに犯人でなくなってしまうような完全なアリバイを持つ人物が、実は犯人であるという、そこにトリックがあり、探偵小説の妙味があるのである。然し、従来の探偵小説の多くは、このトリックにムリをして、そこで人間性をゆがめ、不合理な行為や心理をムリヤリにデッチあげて、又、作者も読者も、探偵小説のトリックはそういうものだと鵜呑うのみにして疑っていないのだ。
...
 私が犯罪心理の合理性というのは、こうした人間性の正確なデッサンによるものをいうのであって、探偵小説を愛読して、人間性、合理性という点で裏切られるたびに、ひとつ自分で、ケンランたる大殺人事件を展開させ、犯人の推定をフンキュウさせながら、人間的に完全な合理的な探偵小説を書いてみたいと思うようになった。

 なお、「談話室・坂口安吾をめぐって」に彼の「探偵小説」リストがあります。

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